「改善施策は十二件。そのうち九件が完了したので、進捗率は75%です」
計算は合っています。それでも会議で「では、いつ終わりそうですか」と聞かれると、75%だけでは答えられないことがあります。
残っている三施策が、すぐに終わる小さな作業とは限らないからです。完了した九施策よりも、残る三施策のほうが多くの人員や時間を必要とするかもしれません。途中で二施策が追加されていても、「最初に予定した十二施策」を分母にしていれば、75%には表れません。
数字が間違っているわけではありません。数字を作った担当者が、何かをごまかしたわけでもありません。ただ、その数字が何を数え、どの判断までに使えるのかが、数字だけでは見えないのです。
九件÷十二件という計算から分かること
九件を十二件で割れば75%です。この数字から分かるのは、最初に予定した施策を件数で見たとき、四分の三が完了したということです。
一方、この75%だけでは、次のことまでは判断できません。
- 作業量として75%まで進んでいるか
- 予定どおりの時期に終わるか
- 途中で追加された施策を含めた全体の進み具合
- 残った作業に必要な人員や時間
施策を一件ずつ同じ重さとして数えた数字と、作業量や完了時期を見たい会議の問いが、ずれているためです。
ここで必要なのは、75%を取り消すことではありません。「何を一件と数えたのか」「この数字から何を判断してよいのか」を数字の横へ書き足すことです。
数字の六つの欄外
Book27『その進捗率、何を数えた数字ですか?』では、会議で数字を使う前に確かめたいことを「数字の六つの欄外」として整理しています。
六項目は、すべて同じ性質ではありません。数字の作られ方を確かめる五つと、使い道を確かめる一つに分かれます。
作られ方の五つ
- 対象:何についての数字か。何を一件と数えたか
- 期間:どの期間の数字か。どの時点でその期間へ入れたか
- 分子:割り算の上に何が入っているか。何を完了としたか
- 分母:割り算の下に何が入っているか。全体として何を置いたか
- 除外条件:何を計算から外したか。その理由は何か
使い道の一つ
- 判断に使える範囲:この数字から判断してよいことと、この数字だけでは判断できないこと
作られ方が明確でも、その数字があらゆる問いに答えられるわけではありません。「進捗率75%」が件数の消化状況を示す数字なら、残作業の重さや完了時期には、別の情報も必要です。
会議へ持ち帰れる「数字の定義メモ」
六つの欄外を毎回口頭で説明するのは大変です。そこで、数字の名前と作られ方、使える範囲を一枚に残します。Book27では、この実務道具を「数字の定義メモ」と呼んでいます。
数字
予定していた施策の進捗率75%
対象
最初に予定していた十二の施策
期間
今回の進捗会議時点
分子
完了した九施策
分母
最初に予定していた十二施策
除外条件
途中で追加された二施策は含めていない
この数字から判断できること
件数で見た、当初予定していた施策の消化状況
この数字だけでは判断できないこと
作業量としての進捗、完了時期の見通し、追加施策を含めた全体の進捗
このメモがあれば、75%という数字を残したまま、どこまで判断に使えるのかを参加者と共有できます。作業量を見るなら残る施策の見込み工数を、完了時期を見るなら依存関係や担当者の予定を、追加施策を含めるなら分母を見直した数字を、あわせて確認できます。
次の会議で使える確認の一言
この75%は、何を分子と分母にしていて、どの判断までなら使える数字ですか?
これは、数字や集計した人を疑う質問ではありません。数字が答えられる問いを確かめ、会議で判断材料として使える状態にするための質問です。
「75%なら残りは25%ですね」と先へ進む前に、割り算の上と下、その数字が使える範囲を一度確認する。短い問いですが、同じ数字を見ながら別の話をする状況を減らせます。
次の困りごとに合う一冊
同じプロジェクト運営の本でも、整理したい問題によって入口が変わります。
- 数字を含むプロジェクト全体のつながりを整理したい
Book15『PMOって、結局何をする人ですか?』 - その数字をもとに決めた理由を残したい
Book18『議事録には、「なぜ」が足りない。』 - 数字を見ながら要望の優先順位を決めたい
Book23『全部大事では、何も決められない。』 - 数字の作られ方と判断に使える範囲を整理したい
Book27『その進捗率、何を数えた数字ですか?』
数字を疑うのではなく、数字の横に書き足す
進捗率75%は、計算として正しくても、作業量が75%進んだことや、予定どおり終わることまでは約束しません。
対象、期間、分子、分母、除外条件という「作られ方の五つ」と、判断に使える範囲という「使い道の一つ」を確かめる。それだけで、数字は会議で使いやすい言葉になります。
Book27では、架空の問い合わせ対応改善プロジェクトを通して、数字の六つの欄外と数字の定義メモを一冊の流れで解説しています。統計やデータ分析の専門書ではなく、PM・PMO・プロジェクトリーダー、SE、社内SE、業務部門の担当者が、次の会議で使うための実務書です。
関連する別の入口として、公開済みのnote記事「同じ『80%』を見て、会議で違う話をしていませんか?」では、24時間以内解決率を例に数字の定義を扱っています。

